-
S_A:多様性と対話~垣根を越えてより良いがん治療・ケアを提供するために~
- 今回、がん患者のためのケアに携わる専門家が集まり、 学術というキーワードではじめて合同大会を開催することになった。 本シンポジウムでは、近いようで知り合ってこなかったケアの 従事者同志として、まず各学会の代表から学会の特徴や目的、活動状況、将来計画を10分程度で概説する。 そして患者、がん専門医・研究者との対話を進め、がん患者のためのケアの将来を展望する。各学会の今後の活動指針に資する議論を行いたい。
-
S_D:ピア・サポートの現状と未来:ポストコロナのピア・サポートを考える
- 第3期がん対策推進基本計画において「がんとの共生」が分野別施策として掲げられ、ピア・サポートの普及が取り組むべき施策として位置づけられました。これがきっかけとなり、ピア・サポーター養成のための研修事業やがん診療連携拠点病院でのがんサロンの設置などの取り組みが進められてきました。 しかしながら、全国的にはまだピア・サポートが十分に普及しているとは言えません。今回のCOVID-19による影響で、すでに行われているface to faceでのピア・サポート活動に大きな制限が加わることとなりました。ポストコロナ・ウィズコロナに対応しピア・サポートの研修や活動の方法そのものを再考しなければなりません。一方で、オンライン活動やSNS等により、新たなピア・サポートの形もみえてきました。 本セッションでは、今までのピア・サポートを振り返り、これからのピア・サポートの展望を皆さんと一緒に考えたいと思います。
-
S_G:医療者が携わる「第三の場」におけるがん患者・家族ケアの可能性
- がんとともに暮らす時間が長くなり、がんによる個々の暮らしへの影響も多様化しています。さまざまな葛藤や苦悩を抱えながら、がんと共に生きる人の力を注視できる多様なケアやサービスの進化が求められています。 全国に相談支援センターが整備されている一方で、地域にも医療者による個別相談やグループプログラム等を提供する「第三の場」がオープンしています。 「第三の場にいる医療者」として、どのように他の医療機関や患者会等団体と連携協力しコミュニティを育んでいるか、スタッフやボランティアの育成、ファンドレイジング活動のアイデアなどに触れ、社会全体でがん相談支援の在り方の幅を広げていくためのヒントをともに考えたいと思います。
-
S_J:カンナビノイドの基礎知識とカンナビノイド医薬品の臨床研究を取り巻く規制と課題
- 日本未承認のnabixinolやmedical cannabis (≒カンナビノイド医薬品)は、主に欧米で承認またはコンパッショネート使用として、標準治療では対応困難ながん性疼痛などに、緩和ケアや支持療法として用いられています。一方、日本では大麻取り締まり法(1948年公布)第4条により、大麻から製造された医薬品の人への施用は禁止され、臨床試験が実施されず、臨床系学会ではトピックとして取り上げられず、医療関係者や患者などに正しい知識が浸透していません。本シンポジウムの目的は、カンナビノイド医薬品の日本・世界での現状を正しく認識し、日本での臨床試験/使用へ向けての課題を明らかにすることです。
-
S_S:多職種でかかわるirAEの対策
- 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、今までの抗がん薬と違った機序で効果を発揮しており、さまざまながん種で使われるようになってきました。最近では、進行再発症例だけでなく、治癒を目指した補助治療として周術期にも使用され、殺細胞性抗がん薬との併用、ICI同士の併用も試みられています。使用の広がりとともに、より安全に使用するため、その副作用(irAE)について、医師だけでなく、医師以外の医療スタッフも熟知している必要があります。また、緩和ケアに関わる医療従事者にとって、ICIは従来のがん薬物療法とは異なる有害事象が出現し、苦痛の原因となったり、ICIは使用中止後の緩和ケア中心の療養中(在宅や緩和ケア病棟など)に有害事象が出現するなど、有害事象管理としての支持療法と緩和ケアを切り離すことができないことを理解する必要があります。このセッションでは、ICIを使用している患者に対して、がん治療および緩和支持療法に関わる各職種・チームがどのようにかかわっていくべきか議論します。
-
S_4:骨転移の痛みのマネージメント
- がん骨転移は、臨床的に問題となる症例だけでも、わが国で年間新規に10万人以上発生していると考えられます。画像診断や抗がん剤治療の進歩などによって、がん患者の予後は改善傾向であり、骨転移をきたす患者はさらに増加傾向にあります。骨転移による痛みや機能障害に対するマネージメントは、がん診療や緩和医療の中でも大きな部分を占めると思われ、職種・診療科横断的に行うことが理想的です。しかし、必ずしも医療者の注目度は高いとは言えず、複雑で専門的な対処が必要な背景も影響しているでしょう。このシンポジウムでは、それぞれの立場で骨転移に積極的に対処されている演者によって、発表と意見交換を行います。皆さんの参考にしていただければ幸いです。
-
S_5:しびれのマネジメント2020
- 化学療法に伴う末梢神経障害(CIPN)のマネジメントについては、米国臨床腫瘍学会(ASCO)よりガイドラインが発行されたのが2014年、日本がんサポーティブケア学会より末梢神経障害マネジメントの手引きを発刊したのは2017年と最近の事です。これは、CIPNのマネジメントに関して信頼度の高いエビデンスが少なかったためと考えられます。ASCOガイドラインではCIPNの予防に推奨できる薬は無いと述べられており少しでも効果が期待できる手段を見つけ提供していく必要があります。このセッションではCIPNに対する薬物および理学的方法による各種対応を多職種からエビデンスを意識することにより整理するともに、今後期待できる治療を紹介したいと思います。
-
S_6:非がん終末期の痛み:慢性呼吸器疾患への対応
- このセッションは、今後、緩和ケア領域で非がんの終末期に関わる必要もあるであろうことを考えて企画しました。 特に最近は慢性呼吸器疾患患者の紹介が増えているように思われます。そこで、井上卓先生に慢性呼吸器疾患患者の身体的苦痛とくに疼痛緩和についての注意点に関して、間宮敬子先生には非がんで使用できる鎮痛薬の話と呼吸困難の時の対処法を、そして宮田知惠子先生にはがんリハビリテーションのみならず呼吸器疾患に関するリハビリテーションについてお話しいただく予定です。それぞれの専門家の意見をもとにディスカッションしていきたいと考えています。
-
S_7:がん疼痛に対する鎮痛補助薬を化学的に究明する
- オピオイドを主体としたがん疼痛の症状緩和のスキルはPEACEプロジェクトなどを通し均霑化されてきています。しかし十分なオピオイドの調整を行っても症状緩和が得られない難治性のがん疼痛は未だ多く存在し、患者さんは勿論のこと、我々医療者を悩ませています。実臨床においては鎮痛補助薬が用いられることが多いものの、がん疼痛に対する鎮痛補助薬のエビデンスレベルは乏しいのが現状であり、その中でも数少ないエビデンスを主体に症例報告、そして慢性痛や基礎研究での知見を応用して治療にあたっていることが多いと思われます。 近年本邦においても鎮痛補助薬の臨床研究が進み、またがん疼痛に対する慢性痛や基礎研究の臨床応用に関する新たな見解も述べられてきています。本シンポジウムでは「がん疼痛と鎮痛補助薬の関係」をより良いものにしていくため、あらゆる方向からアセスメントして参ります。 会場の皆様もどうかご一緒に!
-
S_8:がんサバイバーの慢性疼痛をどのように理解し、どのようにマネジメントするか?
- 本邦における慢性疼痛は全成人の10~30%が罹患していると言われており、 わが国の極めて大きな健康損失の原因となっています。がん患者さんにおいても術後の乳が ん患者さんで頻度が高いことが示されています。慢性疼痛が発現、維持されるメカニズムは未だ十分に解明されていませんが、 その病態としては、身体のみならず、心理・社会的側面が複雑に関与した複合的なものが示唆されています。 今回はがんの痛みの中でも手付かずの状態といってもよい、がんサバイバーの慢性疼痛について学際的に論じる場としたいと考えています。また緩和ケアに役立つ慢性疼痛の診療(身療/心 療)エッセンスをわかりやすくお伝えいただく予定です。
-
S_10:がん患者の呼吸困難~疾患関連呼吸困難と治療関連呼吸困難の違いとピットフォール~
- 呼吸困難はがん患者において頻度が高く、QOL低下をもたらす苦痛症状である。がん患者の呼吸困難の原因は原疾患に関連するものに限らず、呼吸器感染症の合併や治療関連肺障害によるものも原因となり、必ずしも終末期だけで問題となるものではない。特に、近年は免疫チェックポイント阻害薬に伴うirAEとしての肺障害(間質性肺炎)も呼吸困難の原因として新たに考慮しなければならない項目として加わっている。特に、irAEは遅発性に発症することもあり、緩和ケアセッティングでも治療可能な原因の一つとして見流さないようにすることが重要である。このセッションでは、がん治療専門家にも知っておいてほしい呼吸困難に対する“症状緩和治療”に関するエビデンスと今後の研究の展望と緩和ケア専門家にも知っておいてほしい治療関連肺障害のオーバービューを共有したい。
-
S_11:がん患者の便秘・下痢を支援する
- 便秘や下痢といった腹部症状は、がん患者では抗がん治療に起因するものから病態の進行に起因するものまで幅広く、高頻度で認められます。便秘や下痢はQOLを低下させる症状であるにも関わらず、医療者からは過小評価されがちです。本セッションでは、便秘・下痢のマネジメントについて、多職種の視点から、各職種が認識している役割、各職種に期待する役割について検討していく予定です。
-
S_12:CINV研究に学ぶ支持療法のこれから-多職種連携
- 化学療法誘発悪心・嘔吐(CINV)は、支持緩和療法の中でも最もエビデンスが豊富な領域の一つです。日本がんサポーティブケア学会のCINV部会では、CINVに関する最新の情報の収集と解析、さらなるエビデンス構築のための臨床試験、患者情報を収集するためのディバイスの開発、制吐剤適正ガイドラインの患者解説書の作成などにおいて多職種が連携して活動を行ってきました。本シンポジウムは、今後ますます科学的エビデンスが求められる支持緩和療法において、CINV部会における多職種連携を通した取り組みと、その多職種連携の重要性を概説することにより、これからの支持緩和療法構築の一助となることを目的した企画です。
-
S_13:3学会からオランザピンを語る
- 今回、緩和医療、サイコオンコロジー、癌支持療法の各学会が、夢の合同会議を果たすことになりました。制吐剤の臨床研究に携わってきた司会者にとり、特に興味深い話題は、精神科の薬剤のリポジショニングで抗癌剤誘発嘔吐事象に保険承認がなされたオランザピンです。一つの薬剤を3学会で語り合う絶好のテーマではないかと考えました。各々使用目的は異なりますが、有害事象の情報を共有し、より安全で有効な本薬剤の活用法を見出す機会になればと考えます。
-
S_15:進行がん患者の浮腫に多職種で挑む
- 進行がんにおける浮腫の原因は様々であり、複数の因子が組み合わさって発症していることも少なくない。また、それらに対する治療・ケアは、複合的理学療法などの積極的アプローチが有効な場合もあれば、ADLやQOLを重視した緩和的アプローチが望まれる場合もあり、ゴール設定も患者ごとに異なる。 本セッションでは、この多様性のある進行がんの浮腫に関する基本的な病態と治療・ケアを再確認するとともに、多職種がどういった視点を持ち、どのようなアプローチで協働することが望ましいのかを話し合う機会とする。
-
S_16:緩和・支持・心のケアにおける悪液質対策の意義
- 悪液質は慢性的な炎症状態をベースに複合的な代謝障害をきたし、骨格筋量の減少を生ずる栄養不良の症候群で、がんをはじめとする慢性消耗性疾患患者に高率に認められます。身体にさまざまな影響を与えるのみならず、心理・社会的にも種々の問題を生じ、医療のアウトカムや患者のQOLに大きく影響します。患者・家族の栄養に関する関心は高く、栄養状態が悪化した際は改善を望む希望が多いにもかかわらず、一般市民はもとより、医療者においても悪液質の認知度は低く、十分な対応がなされているとは言いがたい現状です。緩和・支持・心のケアにおける悪液質対策の重要性と需要を再確認し、その啓発となるシンポジウムを開催します。
-
S_17:がん診療に統合医療を組み入れ、がん患者サポートのさらなる充実をはかる
- がんサバイバーの多くは、従来の治療とともに補完代替/統合医療を利用していることは明らかになっているます。また患者はその利用を医療者に相談しておらず、医療者は相談にものっていないことが多いことも明らかになっています。がんサバイバーは増加の一途をたどっており、医療者は、この事実に真剣に目を向けて日常のがん診療に補完代替/統合医療を組み入れる時期に来ていると思われます。補完代替/統合医療の概要を理解し、現在効果についてevidenceがあきらかとなってきている、漢方薬、鍼治療、マインドフルネスについて理解を深め、明日からのがん患者サポートケアがさらに充実できるようなセッションとします。
-
S_18:がん患者を口腔から支援する
- がん治療では様々な口腔有害事象が発生し、時に生活の質は著しく低下します。一方、根拠に基づいた適切な口腔支持療法は患者の生活の質を大きく向上させます。本シンポジウムは、「がん患者を口腔から支援する」をテーマとし、1)専門家が学術というキーワードで更なるケアを創出するために行っていること、2)がん専門病院ならびに地域の歯科医師が行っているがん口腔支持療法の実際(頭頸部がん放射線治療後のがんサバイバーや、薬剤関連顎骨壊死の対応、さらに口腔機能管理における「義歯の扱い」等に言及します。)そして3)緩和ケアチームを経験した看護師による歯科との連携や事例の紹介を基に、多様性のある対話の機会を提供します。
-
S_19:がんロコモ
- 「がんロコモ」は、がんによる運動器障害(骨転移や骨軟部肉腫など)と、がんの治療による運動器障害(二次性骨粗鬆症、筋力低下、末梢神経障害など)、がん患者に併存する運動器障害(腰部脊柱管狭窄症、変形性関節症など)によって移動能力が低下した状態を指す概念です。現代は、がんに罹患しても生存を目指すだけではなく、最期まで人間らしく動けることが大切とされようになってきました。2018年に日本整形外科学会からされた「がんロコモ」の提唱は、がん患者の運動器診療に様々な医療者が積極的にかかわることによって、介護を減らし、社会全体の負担を軽減することを目指すものです。本シンポジウムでは、緩和医療における運動器障害の重要性を認知していただき、アプローチなどについてそれぞれの立場から発表し、意見交換していただきます。
-
S_22:怒りのアセスメント
- がん診療において、患者やその家族が怒りを表出することは少なくなく、しばしば医療者はとまどいを感じることがあります。怒りの背景を評価することは患者の支援につながるものと考えられますが、病気に関する不安や病気がもたらす不全感等から生じる正常反応だけではなく、せん妄や認知症、脳転移等の器質的な要因や、双極性障害や統合失調症、さらにはパーソナリティーの問題による易怒性も関係していることがあります。したがって包括的な評価が必要と考えられ、各類型別に評価法やポイント、対応について論ずることを目的に、このたび本シンポジウムを企画しました。
-
S_23:がん患者の妊孕性温存における支援
‐がんの告知、妊孕性温存治療、治療後も続く生殖の悩みへの心理社会的支援‐
- 第3期がん対策推進基本計画におけるAYA世代の支援と支援の拡充により、 妊孕性に関する心理社会的支援が必要とされています。 AYA世代は、妊孕性温存の時期に限らず、がんの治療中、 そしてがんの治療後においても、再発への不安と同時に妊孕性について思い悩むことが多いです。 そのため、AYA世代に対する継時的な視座に基づく支援が求められています。 本シンポジウムでは、当事者、医師、看護師、心理士といった様々な立場や職種の方にご登壇いただき、 AYA世代の妊孕性に関する心理社会的支援について皆で 一緒に考えていきます。
-
S_24:緩和医療・支持療法・こころのケア、
すべての領域の医療者に求められるコミュニケーションスキル
- 医療のAI化が進むほど、患者-医療者間のコミュニケーションは難しくなり、特に相手の立場で気持ちを慮る共感の重要性は増します。ここでは原点に立ち戻り、共感という普遍的な現象について、①共感はなぜ癒しになるのか?② 共感はなぜ人の心を動かすのか?③共感の価値がなぜ伝わっていないのか?④共感は学習可能なのか?といった論点から議論します。
-
S_25:行動変容介入におけるe-Health/m-Health
- 我が国が目指すべき未来社会の形として、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、仮想空間と現実空間を融合させたシステムにより時間や空間の制限を克服するSociety 5.0が掲げられています。医療福祉分野においてはスマートフォンアプリケーションやウェアラブルデバイスを活用したe-Health/m-Healthが注目を集めており、行動変容介入への活用も試みられています。そこで、本シンポジウムでは、本邦を中心としたIoTを用いた介入の研究事例の紹介を行い、禁煙や栄養・運動指導、心理面への介入など、e-Health/m-Healthの現状と今後の可能性について議論します。
-
S_26:がんゲノム医療の技術革新からもたらされた遺伝子情報に混乱する現場での対応
- 第3期がん対策推進基本計画において、「がんゲノム医療」の推進が掲げられ、臨床現場では施設の準備とともに患者や家族への具体的な対応が求められています。「がん遺伝子パネル検査」は、標準治療の終了後にさらなる治療の可能性を求めて行うことを目的とした検査であるため、患者や家族の期待は大きいものの、現時点では遺伝子変異が見つかる割合も、変異が見つかって実施された治療薬から効果が得られる割合も数パーセントであり、期待と現実との直面に対する精神的支援は喫緊の課題です。さらに、遺伝性腫瘍の遺伝子変異が見つかる可能性もあり、このような複雑多岐に渡る状況への現場での対応について議論を深め、新たながん医療戦略に対して全国One Teamで取り組む足がかりにしたいです。
-
S_29:緩和ケア均霑化にむけた緩和ケアのアウトリーチ活動を広める
- 緩和ケア病棟の増設、在宅緩和ケアの推進、PEACEプロジェクトを通して、緩和ケアの均てん化が進められてきました。けれども緩和ケアの専門施設は偏在しており、僻地のリソースは乏しく、また都市部はその対応すべき人口の多さのために十分な均てん化は依然難しい状況です。また医療者の教育の機会も地域や施設によって大きな偏りが生じています。諸外国では緩和ケア専門機関から地域に「アウトリーチ」することで、少ない医療資源を有効に活用することや、医療者への教育の機会を提供することも行われています。本邦では施設の雇用条件の問題などから定期的なアウトリーチ活動が浸透していない状況ですが、現在教育・都市部の在宅緩和ケア・僻地在宅緩和ケアにアウトリーチ活動を行っている医療者によってどのような活動が行われているのか、また本邦での意味合いを共有し、今後の可能性について探っていきたいと考えています。
-
S_30:在宅緩和ケアを科学する
- 在宅緩和ケアは他の領域と比較すると、実践の科学という側面が強かったように思います。しかし、近年では諸外国をはじめ、わが国からも質の高いエビデンスが発表されるようになってきました。本シンポジウムでは、推薦および公募によって選出された在宅緩和ケアに関わる研究者により、諸外国における最新の在宅緩和ケアに関する研究のレビューや個々の研究者が実施した最新のエビデンスの共有を行い、参加者が自らの診療・ケアをUpdateする機会を提供することを目的とします。
-
S_32:地域におけるがん緩和ケアのネットワークの構築
- 近年、わが国の地域医療については、地域包括ケアシステムの構築を中心に推進されてきましたが、地域包括ケアは、市町村レベルで、慢性疾患を抱える高齢者を主に想定した活動であり、市町村を越えた2次医療圏、都道府県レベルでの活動が中心となるがん医療を十分に包含できていません。 この状況を踏まえ、厚生労働省は、2015年12月にがん対策加速化プランを策定し、緩和ケアを含む地域完結型の医療・介護を推進していくために、緩和ケアに携わる施設間の調整を担う人材として「地域緩和ケア連携調整員」の育成に取り組むことを定めました。この調整員が、2018年7月に定められたがん診療連携拠点病院の指定要件に記載された「地域連携を推進するための多施設合同会議」を効果的に開催するなど、がん医療における地域連携の要になっていくと考えられます。 本セッションでは、先進的に取り組む地域の活動を紹介するとともに、今後、地域で求められる緩和ケア連携のあり方について討議し、検討します。
-
S_33:Integration of Oncology and Palliative Careの展望
- 近年、国内外で「Integration of Oncology and Palliative Care(IOP:がん医療と緩和ケアの統合)」の重要性が示唆されています。一般的にIOPとは、「多職種で構成される緩和ケアチームががん医療の早期から腫瘍医と共に介入を行うこと」と考えられていますが、確立された定義はなく、また我が国の医療状況に合わせたIOPのあり方についてもコンセンサスが得られていません。 本シンポジウムでは、がん医療の第一線で活躍されている様々な立場の先生方からIOPに関する臨床、研究、教育、政策などについてご講演頂き、我が国におけるIOP実現への展望について考える機会とします。
-
S_34:救急・集中治療における緩和ケアについて現状と未来を語り合う
- 悪性疾患を中心に発展してきた我が国の緩和ケアにおいて、心不全を代表とする非がん疾患への対象の広がりが活発に議論されている。このような変化のなか、従来のがんを対象とした緩和ケアの実践者が一層のインパクトを感じるのは「救急・集中治療領域の緩和ケア」であろう。我が国において、急性期医療の代表である救急および集中治療は、緩和ケアと相反するイメージを抱かれやすい。一方、そのような急性期医療の現場に目を向けると、苦痛と苦悩に直面する患者と家族は多く存在する。当セッションでは救急・集中治療の現場の緩和ケアニーズに対する取り組みを共有し、将来に向けて議論する。
-
S_35:超高齢社会における症状緩和の医療
- 超高齢社会を迎えたわが国の2020年~2024年のがん罹患予測数は、65歳以上が76%を占めています。高齢者は、身体的健康の危機、死の危機を踏まえてケアをする必要があり、エンドオブライフを見据えた緩和ケアが望まれます。高齢者がん患者の医療において、本人の意向の確認、QOLの維持、フレイル、ポリファーマシー、認知機能の低下等の課題があります。 本シンポジウムでは、高齢がん患者の意思決定支援、スクリーニングツールの活用、がん薬物療法、手術療法、ホスピスケアに関して話題提供と今後の展望について議論を行います。
-
S_37:認知症の緩和ケア~意思決定支援を含めて~
- 超高齢社会を迎えている今、認知症の緩和ケアは緊喫の課題の一つである。 身体的苦痛や合併症に対する医学的マネジメント、葛藤やスピリチュアルペインに対する心理的・教育的支援、治療中止や差し控えを含めた意思決定支援、アドバンスケアプランニング、家族の支援、臨床倫理など、これまで我々が対象としてきた緩和ケアの課題に加え、認知症では認知障害や行動心理症状が併存することで、問題とケアの方法がより複雑となる。 本シンポジウムでは、認知症の緩和ケアは、これまでの緩和ケアと何が共通し、異なるのか、どのような配慮や工夫が必要なのかについて、精神医学、老年医学、在宅医学、老年看護の実践、法と倫理の各立場から学ぶ。
-
S_38:AYA世代患者の「生きる」を支える緩和ケア ~エビデンスと先進的取り組みに学ぶ~
- AYA世代、特に若年成人患者の意思決定支援、心理・社会的サポート、家族支援については、その世代特有の課題が存在する。 しかしその発生率の低さから、経験が蓄積されにくく、対応に戸惑うことも少なくない。 そこで本セッションでは、AYA世代患者特有の心理や行動、社会・家族背景を踏まえ、緩和ケアが担う役割について考える機会としたい。 各施設における先進的な取り組みや研究結果などを共有し、明日の支援に繋がるヒントを考えてみたい。
-
S_39:小児がん患者の緩和ケア~英知を結集して明日のケアにつなげる
- 小児がん患者の年間死亡数は450人前後であり、成人と比較して圧倒的に頻度が少ないと言えます。そのため、終末期の実態を経験則で把握することが難しいのが現状です。本セッションでは小児患者の終末期の現状について、研究で得られた結果と演者の現場での経験、さらに、「緩和ケアチームの手引き」小児関連記載追加のためのWGで検討した小児患者に関わる際のTIPSを共有し、小児がん患者への質の高い医療・ケアについて議論します。
-
S_40:心不全の緩和ケア~次のステップに進むために~
- 心不全の緩和ケアが診療報酬の対象となり、各施設や各地域で様々な取り組みが始まっています。しかし、臨床実践に役立つ知識は経験知として蓄積されている一方で、心不全の緩和ケアに関するエビデンスは依然として乏しいのが現状です。 本企画では、先進的な取り組みを行っている施設の経験知を共有すると共に、それら経験知を他の施設や地域に実装していくために、私たちに何ができるのかという視点で対話をしたいと思います。さらに、今後の心不全の緩和ケア領域で必要となるエビデンスを、いかに構築していくのかについても、皆さんと考えてみたいと思います。
-
S_42:マイノリティのcancer careを考える
- 患者の特性によってがん医療の様々な段階で格差が生じることがあります。格差是正のためには、多領域、多職種、組織で取り組む必要があります。本シンポジウムでは、精神障害者、希少がん、HIV/AIDS、服役者など、マイノリティと称される集団におけるがん医療や支援の現状の課題や今後必要な取り組みを考える場としていきます。
-
S_43:看護ケアup to date
- 緩和ケアに関する看護ケアの最新のエビデンスについて教育的なシンポジウムを行います。 「身体症状」「精神症状」「調査研究等」の3分野について、それぞれ第一線の臨床家・研究者により、国際的な最新の研究成果等をレビューします。本企画は昨年と同様のものですが、1年間でアップデートされた最新の研究成果などを含む予定です。世界およびわが国の研究により、緩和ケアに携わる看護師が知っておくべき最先端の知識や技術を紹介します。ぜひ明日からの看護に役立てて下さい。
-
S_44:内服できない・ルートが取れない終末期患者の症状緩和:緩和ケアの秘伝教えます!
- 終末期患者さんの緩和ケアを行っていると、病状の進行で内服ができない、もしくは静脈ルートの確保ができない患者さんを多く経験することがあり、対応に苦慮することも多いのではないでしょうか。緩和ケアのエキスパートは、そのような患者さんへの対応法を、投与経路、剤形の工夫といったそれぞれの「秘伝」として持っていると思います。本企画では6人のエキスパートの先生方の「秘伝」を緩和ケアの臨床に関わっている参加者の皆様に共有して頂きます。是非とも本企画に足を運んで頂き、ご施設にお持ち帰り頂ければ幸いです。
-
S_45:源流に立ち返る:ホスピスマインドの今日的再解釈
- ホスピスケアは、ずっと昔から連綿と続く「温かいおもてなし」のケアであります。ホスピス・緩和ケアに求められる役割は年々増加しており、診断時からの緩和ケア、非がんの緩和ケア、デス・エデュケーション等、私たちが学び関わっていく領域も広がっています。専門化・高度化し、極めて多忙となった臨床場面で、ホスピスが体現していた精神、ホスピスマインドの源流をつい忘れてしまうことはないでしょうか。このセッションでは、ホスピスケアの歴史を振り返り、がん治療・高齢多死社会の中でのホスピスケア、地域での命のケアの拠点としてのホスピスの役割について、三人の演者にお話しいただきます。このセッションを通じて、「ホスピスとは何か」「ホスピスマインドとは何か」、その源流を再確認し、今の時代に求められるホスピスの役割について新しい視点で考えることができればと思います。
-
S_46:緩和ケアにおけるルーチンデータ測定とPRO:
患者の声を聞くこと、測ることで緩和ケアの質を評価・向上させる
- 近年、海外ではオーストラリアのPCOC(Palliative Care Outcomes Collaboration)、米国におけるMeasuring What Matters、英国のOACCプロジェクト(Outcome Assessment and Complexity Collaborative)など、日常的にデータを収集し、質の保証や患者・家族へのケアに対して直接的にフィードバックする活動や研究が行われている。このような日常的なデータ測定のためにどのような尺度や項目を用いるかという国際的コンセンサスグループも動いており、患者報告アウトカム(PRO: Patient-Reported Outcome)の使用が推奨されている。一方、わが国の緩和ケアの分野ではSTAS-Jなどの医療者による評価が使われてきた経緯があり、痛みなどの限られた症状やがん診療連携拠点病院における苦痛スクリーニングを除けば、臨床におけるPROの使用経験は少ない。本シンポジウムでは、臨床でどのようなデータを日常的に収集していくべきか、そのなかでPROを収集し、患者・家族へのケアにどのように還元していくことができるか、海外の情報をレビューするとともに、国内で先進的にこのような取り組みをしている施設の活動を共有したい。さらに、このような「患者の声を聞くこと、測る」という取り組みを通して、わが国の緩和ケアの質を維持・向上することについて議論したい。
-
S_47:対話を通したAdvance Care Panning
- がん診療連携拠点病院の要件にACPがはいり、患者自身が医療の主人公として意思を表示することが求められています。しかし、突然の罹患や疾病の重症化など予期せぬ状態になって、自己の価値観に向き合い、情報の過不足がある状態で治療の意思を明確にすることは非常に困難です。そのような時にACP本来のありようである、患者と医療者の対話を行なうことは、どのような患者の変化や医療、ケアの効果をうみだすのでしょうか。本セッションでは、形だけにならない対話を通したACP本来のありようについて再考します。また、公募演題ではがん以外の疾患におけるACPの先駆的な取り組みの実践とその効果を紹介いただき、ACPの現状と課題を共有することにします。
-
S_50:支持・緩和・こころのケア研究論文執筆道場
- 支持・緩和・こころのケアの領域の研究を学会発表まではしたが、論文化が大きなハードルになっている学会員は多いのではないでしょうか? 本企画は、これらの領域の研究の論文作成について初学者にわかりやすく伝えることを目的として、それぞれの領域で論文執筆のご経験のある、また指導の経験のある演者の方々に、論文作成のコツ、便利な表現、お勧めジャーナルなどを講義いただきます。
-
S_52:理事長推薦論文
- 理事長推薦の支持療法、緩和医療、サイコオンコロジー領域で過去3年間でインパクトのあった論文を紹介していただきます。
-
S_53:緩和ケアを専門とする医療者の人材育成とそのための支援
~緩和ケアの未来をつくる礎に~
- 2010年代前半に緩和ケアに専従することを志す医師を対象にアンメットニーズやサポートニーズの調査が行われてきました。ただし専門医制度の変革や世代による価値観の変容により、ニーズも変容していくことが予想されます。また、緩和ケアを目指す他の医療従事者のニーズの実態調査の必要性や世代による価値観の変容も同様に生じることが予想されます。本企画では緩和ケアを目指す医療従事者のニーズに関する実態調査結果や 緩和ケアに従事する医療従事者の教育プログラムなどをもとに、今後の人材育成や支援に向けた方向性を話し合い共有していきたいと考えています。
-
S_56:パートナーとしての患者会活動を考える
- 個として存在していたがん患者が、「患者会」として活動を始めてから約50年。この間、インターネットなどの普及や特定非営利活動促進法の整備(1998年)などもあり、より広い範囲で患者同士が繋がりを持てるようになり、情報共有や精神的サポート、政策への参加などの活動が大きく進みました。 また、その後、2006年に成立した「がん対策基本法」の後押しなどもあり、患者会活動は医療政策にも関わりを持つようになり、学会活動などを通じて医療者との連携へと広がりを見せています。 個から組織へ、そして医療者との連携へと、一歩ずつ進展してきた患者支援の取り組みですが、医療者、患者会ともに、パートナーとしてお互いを十分に理解できているとはいえず、それが更なる連携を阻んでいる現状もあります。 そこで本シンポジウムでは、患者会活動のこれまでの経緯、医療者との連携における現状、課題を振り返りつつ、より良いパートナーシップへ向けての議論を深めていきます。
-
S_59:困った時に思い出したい!難治症状緩和のための新しいアプローチ
- がんによる疼痛や疼痛以外の身体症状に対し薬剤の効果が乏しい場合や副作用のため薬剤を十分量使用できない場合、苦痛が緩和しきれず悩むことがあるのではないでしょうか。 このようなときブロック、塞栓、焼灼、骨セメント、ドレナージやステントなどの画像下治療:interventional radiology (IVR)が大きな助けとなる可能性があります。IVRは低侵襲かつ症状緩和が迅速で、結果として薬剤を減量することができるため患者に利益をもたらします。一方で、目の前の患者にどのIVR治療の適応があるか、それぞれの治療の利益と不利益のバランスはどうか、どのタイミングで放射線治療医に相談したらよいか、など迷うポイントも多いのではないでしょうか。 本シンポジウムでは最新の知識やエビデンスを共有するとともに、緩和ケア医と放射線治療医のよりよい連携につながる議論をしたいと考えています。